種について

自家採種できる自然の種

 ここで頒布しているのは、「自家採種できる自然の種」です。
 固定種(在来種)と言われている種類で、全て無施肥・無農薬の環境で育成されています。
 無施肥の環境でこそ、生命力旺盛な逞しい種に育つからです。

 野菜も生き物です。
 施肥された土壌では、自らで養分を探し求めていく必要がありません。
 なので、根も怠けて、地中深くまで張り巡らせようとはしないのです。
 肥料分の少ない土壌では、養分を得ようと根を張り巡らせるようになります。
 そして、土壌の微生物との共生関係も築かれていきます。

 土壌というのは、私たちの身体でいうと腸にあたります。
 微生物は、腸内細菌です。
 私たちが健康を保つには、腸内環境を整えることが必要です。
 野菜も同様に、健全な生育のためには、土壌を清浄に保つことが必要なのです。
 そのため、農薬はもちろん、肥料や石灰など、土壌を汚すものは使いません。

 種が現存しているのは、長い過酷な歴史を生き抜いてきたからに他なりません。
 種には、そんな経験から培われてきた力が眠っています。
 その内在する力を呼び覚ますのが、自然に近い環境ということになります。

 とはいっても、種は、その土地の気候風土に合っているかが大事です。
 なので、種を蒔いても、初めての土地では育ちは良くありません。
 でも、不思議と種を残そうとする元気な株が現れます。
 固定種は、遺伝的に多様性があり、最も、その土地に合った株に命を託すわけです。
 そんな株から採種できたら翌年に蒔いてみてください。
 その繰り返しで、その土地になじんで旺盛に育つようになってきます。

種の種類

固定種とは

 固定種野菜というのは、古来から現代に受け継がれてきた野菜です。
 その地に根付いて形質が固定化されたという意味です。
 伝統野菜や在来種・エアルーム野菜(海外)とも呼ばれています。
 大量生産のために品種改良されたもの(F1種)とは違い個性的です。
 独自の風味やうま味があります。
 そのため、素材の味を生かした料理に向いています。
 固定種は、育てた野菜から種を採って、翌年もその種から育てることができます。
 その繰り返しで、どんどんその土地に合った野菜になっていきます。
 そして、肥料を与えなくてもよく育つようになります。
 固定種には、長い進化の過程で獲得してきた絶大な力が眠っています。
 自家採種によって、その力を引き出すことができるのです。

◎F1種とは

 私たちがスーパーなどで目にしているのは、F1種(交配種)といわれる野菜です。
 (種袋には、○○交配とかF1とか書かれています)
 F1とは、異なる性質を持つ野菜を交配させて作った雑種の一代目という意味です。
 つまり、遺伝的に遠い存在の固定種どうしを人為的に掛け合わせることで、意図した野菜を作りだすということです。
 (遺伝子の組み換えということではありません) 
 それによって生育が旺盛で、収量も多くなります。
 そして、色や形・大きさなども均一に育ちます。
 (まっすぐなキュウリや長さの揃ったネギなど)
 しかし、こうした特性は一代限りのものです。
 このF1種の野菜から種を採って育てても、親とは異なる性質が現れます。
 そのため、自家採種には向きません。
 また、F1種の多くは、雄性不稔(ゆうせいふねん)という性質をもっています。
 そういう野菜は種を作ることができません。
 したがって、種は、毎年、購入したものを使うことになります。

◎雄性不稔(ゆうせいふねん)とは

 正常に花粉を作ることができない性質のことです。
 この性質は、F1種を作るのに、とても都合がいいのです。
 F1種では、意図した野菜どうしを掛け合わせなければなりません。
 つまり、母親役の株の雌しべに、父親役の株の花粉を付けて受粉させなければなりません。
 でも、植物は、雄と雌がはっきり分かれているわけではありません。
 ひとつの花に雄しべと雌しべがあったり、また、同一株に雄花と雌花があったりします。
 そのため、母親役が自家受粉(自分の花粉で受精)してしまう可能性があります。
 したがって、あらかじめ母親役の雄しべを取り除いておく必要があるわけです。
 これを除雄といいます。
 これが、たいへん手間のかかる作業です。
 母親役の雄しべが雄性不稔であれば、わざわざ除雄する必要がなくなります。
 近くで、父親役を育てれば、虫などが花粉を運んで受粉してくれます。
 それでは、どのようにして母親役を雄性不稔にするのかというと…
 この雄性不稔というのは、ミトコンドリア遺伝子の異常によるものです。
 その雄性不稔の株との交配によって、その性質を子孫に受け継がせるわけです。
 (雄性不稔株と交配すると、その子孫は必ず雄性不稔になります)